基陽が安全帯を作り始めたのは15年前。その前は、金物の問屋をしながら、工具袋を作っていました。要望を聞き、こだわりの生地やデザインで丈夫だと言っていただき、喜んでもらっていました。中途半端な満足をしていた頃、こんな声がありました。「これら腰袋を使うのは建設現場や工場。事故が多い。その事故は墜落や転落で重大事故。明日から仕事ができないか、ひどい場合は命を落とす」
安全帯をしない原因は、「面倒だから」「自分は落ちないから」。先ずは「着けたい」と思って頂こう。そこから「カッコいい」安全帯を目指し、作り始めました。最初は認知度も低く、「そんなに売れないし、いらない」という店舗さんからの声が多くありました。その頃、ある足場の会社の方から、自分たちの営業所を回っていいと言っていただき、現場が終わる時間に営業所を訪問し始めました。
神戸の営業所に行った日は、初冬の夕暮れ。現場から戻って来た建設マン達は重機を動かし足場の片付けや、翌日の準備の最中でした。わたしは安全帯をアピールしようと、営業所の前に立っていました。しばらくすると、一人の建設マンが身長ほどの足場を組んでくれ、わたしが持っていた安全帯を黙って取り、カチャカチャとそのミニ足場に掛けました。そして「こうしておく方が紹介しやすいやろ」とボソッと言いました。涙がひと粒出そうになりました。「あんたの売上になるから」と買ってくれた人もいました。その後も、沢山のアイデアを頂き、暗い山道の中、心にほんわかと灯りがともったような気持ちで帰ってきました。
最初はぶっきらぼうな建設マン。とんがってる建設マン。まだまだ勉強中で、知らない事も多い私たちです。だけど、建設マンのおかげで、私たちの安全安心快適がある。建設マンはカッコいい。やっぱり、建設マンが好きだ。これからも、建設マンをもっとカッコ良くするお手伝いをしていきたい。ひんやりした風が吹く初冬になると、あの夕暮れの日を思い出します。言葉少なに応援して頂いたあの建設マンたちに、お返しするつもりでこれからも歩んでいきたい、と改めて感じます。
KHニュースはおかげさまで25周年300号となりました。なかなか訪問できない中、何かお届けしたいと始めたKHニュース。“文字だけ白黒紙面”が初期で、その後も模索しながらの今号となりました。「読んでるよ」と言っていただいたり、KHニュースを見て御注文いただけたりすると本当にありがたいと思います。50周年を目指し、お声を聞きながら歩きます。お声を聞いて、安全安心をカタチに。これが私たち基陽の使命です。本当にありがとうございます。
藤田尊子